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デヴィ夫人の「納得できない生活保護」が納得できない


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デヴィ夫人が生活保護受給者に言及しているという話が、数日前からずいぶんと話題になっている。生活保護受給者の端くれとしても、ひと通り記事を読ませていただいたのだが、どうも引っかかるというか腑に落ちない。

記事の出どころはデヴィ夫人が発行している無料メールマガジンだと知ったので登録してみるも、該当の記事はニュースサイトのリンクに貼ってあり、メルマガ会員にならずとも読むことができた……(笑)。

その記事がこちらになるが、1つずつ引用しながら論破していこうと思う。まず、いきなり「最も腑に落ちない箇所」を引用すると、 

また、応募理由については「受給額11万円で、敷金なしの家賃9万円のマンションに住み、家賃の支払いが困難になってきた」からだと明かしている。

ある日、デヴィ夫人が住み込みのお手伝いさんを募集した時にやってきたという女性の応募理由についてのくだり。

僕自身、生活保護を受給している身だからこそ疑問に思ったのかもしれないが、保護費の総額が11万円なにのに対して、家賃が9万というそのデタラメな使い方について。こんなの、役所からストップがかからないわけがない。

というか、普通に考えてみてほしい。月収11万円の人が家賃9万円の物件に住むか?残りの生活費、2万円。それで1ヶ月生活できるか?

 まあ、今まで夫か誰かと一緒に住んでいて離婚してこれから一人暮らしになる。家もこれから単身者用のを探すとかなら分かるが……。そうした細かい描写もなく、「保護費が11万円なのに家賃9万円ですってよ!」ではないだろう。

次は少し戻るが、

その女性が「髪を染め、きちんとお化粧して 身なりもよく、毛皮の襟のついたコート」といった姿だったため、

ここも意味不明。身なりをきちんとしていて何がいけないのか? 化粧の1つもして行かなかったらそれはそれで「保護受給者はやっぱり常識がなってないわネ!」とか言っていたのではなかろうか。

あと、最近は中古リサイクル市場が活発なの知らないのか?僕がお世話になっている生活保護を支援する団体も、リサイクルで集めてきた者を炊き出しの際に一緒に無料配布したり、もっと言えば都内でリサイクルショップ開業して運営してるから。僕が個室シェルターからマンションに引っ越した際に揃えた家具もそこで格安で購入したし。

企業組合あうん

ちなみにお店はこちら。

あと、僕の知り合いに87歳の受給者のお爺ちゃんがいるけど、その人もリサイクルを上手く活用してめっちゃオシャレな服いっぱい持っているから。「良い服着ている=高い金を出して買った」とはならんだろうが。

他の文章も引用しながら反論していくが、

デヴィ夫人は11万円という受給額や、女性が永久に保護を受けられる事実にひどく驚き、「それで 生活保護なら 日本全国の皆さんが私も! 私も! と、手をあげそうですね」「たとえ疲れてへとへとでも、仕事にまい進する社会人はやるせないですね」と、複雑な心境を告白した。 

ここは普通に「生活が苦しいのであれば、生活保護申請していいんじゃない?」と思うが。申請する権利は国民みんなが持っているし、生活に苦しいのであれば、もしかしたら自治体が決める最低生活費より収入が少ないんじゃない?そういう人はどんどん受ければいいと思うよ、うん。

デヴィ夫人は「たとえ疲れてへとへとでも、」と書いているけど、 あまり無理しすぎるとうつ病になって自殺しちゃったりするから、本当にへとへとなら生活保護を受けてでも休んだ方がいいと思うよ?死ぬぐらいなら逃げた方がいいよ。いや、嫌味とかではなくて真面目にそう思う。

ちなみに「永久に受けられる」という部分は「医師の診断書があるから」と本人が言っていたそうで、ここについてはその医師に聞いてみないと何とも言えないが。

ただ、役所も最低1年に1回は課税調査をして不正受給がないかを確認するし、もし病気がよくなればそこからは「就労指導」が入って就職活動をするように役所から言われるようになるだろう。

病気が良くなっているのにその指導から逃げ回っていると、最悪の場合には保護打ち切りになるし。そんな死ぬまで受給できるのが保障されている人なんていないと思うのだが……本当なのだろうか。申し訳ないが、にわかには信じられない。

続けて、受給を許可した川崎市役所の判断に「一生S.Aさん(生活保護受給者の女性)の生活を川崎の納税者が負担するんですか?」「必要な受給者もいる一方で、不正受給者も後を絶たないといいます」と指摘し始める。 

一生受給うんぬんの部分はすでに書いたの省略しておくが、この「必要な受給者もいる一方で〜」の不正受給について指摘する部分。ここも危険だと思う。

「生活保護はけしからん!」と言う人間の大多数は、このデヴィ夫人と同様に不正受給を槍玉に挙げるが、不正受給(濫給)よりも受給漏れ(漏給)の方がより深刻な問題である。 役所に無理やり保護を打ち切られ、「おにぎり食べたい」とメモを残して餓死した北九州市の事件は有名だと思うが、他にも全国各地で同様の事件は起きている。

批判を承知で書くが、はっきり言って不正受給を取り締まるのなんて「後回し」でいい。もちろんゼロにはすべきだが、優先順位は低く、他にやることがあるはずだ。

特に、本来権利として保障されている申請をさせない「水際作戦」であったり、前述した受給者に無理やり保護の辞退届を書かせた「ヤミの北九州方式」であったり、これから自民党がやろうとしている「沖合作戦(生活扶助義務の強化)」などを止めさせる方が、不正受給を取り締まるより何倍も重要であり、影響力のある芸能人が「不正受給!不正受給!」と言って回るのは直ちにやめるべきである。

デヴィ夫人は「生活保護制度は、国民の最後のライフライン」「この制度は皆さんの税金で賄われています」と唱えながら、保護申請を受けられず凍死や病死に至った姉妹や、保護を打ち切られて餓死した男性など、過去に起こった悲惨な事件に言及。事例をふまえながら、「障害でも何でもない 健康そうなこの人、一度でも自分の置かれた立場を、納税者のことを考えたことがあるのでしょうか」と、一部の保護受給者を厳しく批判する。 

という事を書いていたところ、デヴィ夫人もそれらの事件にメルマガで言及していたようだ。しかし、まだまだ甘い。過去の悲惨な事件に言及しているにも関わらず、その後に「障害でも何でもない健康そうなこの人」というのは、一体何を根拠に言っているのだろうか。

生活保護制度の中には「無差別平等の原則」という規定がある。 

第2条(無差別平等)

すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。 

役所が受給と判断したのであれば、それは「法律の要件を満たす限り」にあたり、そこに当てはまる人は無差別平等に保護される(暴力団員は不可)。

実は、戦前や戦後まもない頃の旧生活保護法では「素行の悪い人間は保護を受けられない」という規定があった。 しかし、現在の憲法には25条に「生存権」が規定されている。

そこから「生きる権利を国が保障しているはずなのに、セーフティーネットを受けられるかどうかという生死に関わる判断を、役所の一存で決めて良いのか?」という議が巻き起こり、昭和30年に生活保護も「無差別平等」に保護されるという規定に置き換えられた。

デヴィ夫人は、一見すると「悲惨な事件にも言及しつつ、不正受給は許さない!」というスタンスを醸し出しつつ、実際は件の話に出してきた受給者のことをこき下ろしている。「こんな嘘くさい人間は保護されるべきではない」と、暗に批判している。

そして、「一日も早く自立し、 社会復帰を目指していただきたいと思います」と祈願していた。 

本当にそれを願っているのであれば、悪意と断定に満ちた「生活保護受給者の肩身を狭くさせるような文章」を書き、それをメルマガとして公表するのはやめてほしい。

ちなみに昨日、僕が普段お世話になっている支援団体の方々と飲む機会があり、その場で社会活動家としても有名なとある方に、今回のデヴィ夫人の記事に対する意見(特に保護費11万円に対して家賃9万円の部分)を聞いてみた。その方の回答は、やはり「そんな保護費の使い方は、役所が許可すると思えない」というものだった。

生活保護受給者は、ただでさえ受給者ではない人々からの「スティグマ(負のレッテル)」に怯えている。繰り返しになるが、芸能人という影響力のある人間が、メルマガという拡散力のある媒体を使い、誤った知識を植え付ける。そういった不健全なことは、今すぐ止めてほしいと強く願う。

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