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貧困ビジネスの実態を暴いた「潜入 生活保護の闇現場」を読んだ感想


かつて、業界大手(貧困ビジネスに業界があるかは不明ですが……)の貧困ビジネス施設として名を馳せた「ユニティー出発(たびだち)」という団体が存在しました。ちなみに代表者の名は、和合秀典(わごう・ひでのり)。

参考までに「貧困ビジネス」とは何かというと、

ネットカフェ、住み込み派遣、ゼロゼロ物件、無料低額宿泊所、消費者金融、およびヤミ金融などといった、経済的に困窮した社会的弱者を顧客として利益を上げる事業行為を指す。 ホームレス支援や貧困問題にとり組むNPO法人『自立生活サポートセンター・もやい』の事務局長を務める湯浅誠により提唱された概念である。

Wikipediaより引用)

といった、つまりは「生活保護を受けている困窮者を相手に不当な搾取をするビジネス」の事を指します。本来とはビジネスともいえないのですが、ここ10年ほどの間に急速に広まってきたビジネスです。

今回の本は、とある事情からこのユニティー出発で生活保護を受けることになり、その実態を調査するために自身が「生活保護受給者」となって実態調査をしていた長田龍亮(おさだ・りゅうすけ)という方が書いた本です。

潜入 生活保護の闇現場 (ナックルズ選書)

潜入 生活保護の闇現場 (ナックルズ選書)

 

著者の長田さんは、ユニティーが出していた(偽の)求人に釣られてユニティーを訪れ、そこで生活保護受給を打診されます。

この団体が人を集める方法としては、そういった「偽求人で釣る」という方法もありましたが、最も多かったのは路上生活者に「飯も風呂もあるよ」と声をかけて連れてくる方法(ユニティー用語で"救済")でした。

そしてユニティーの寮では、三食と部屋があてがわれる代わりに様々な制約を課されます。具体的には、

  • 就職活動の禁止
  • 携帯電話の使用禁止
  • 保護費は全額回収、貰えるお金は5000円+1日500円の月2万円ほど
  • エアコンの使用は14時〜23時(真夏でも)
  • 風呂の利用時間も制限あり
  • 食事はレトルトものばかり
  • ユニティーが経営する飲食店で働いても月給は4万円+寮に住まないといけない

というような状態でした。

何か不満を口にしようものなら、ヤクザ上がりの職員に「また路上生活に戻りたいのか!」と脅されますし、入所者同士の会話を密告する者もいたので、不満があっても我慢するしかなかったようです。

他にも代表の和合は、搾取した保護費で豪邸を建てたり、赤字になっている他のビジネスへの補填に使ったり、行政の担当者はやる気がなく、まるでユニティーと癒着しているかのようだし……。

ひと通り読んでみて思いましたが、まあひどい状態だったことが分かります。

代表が脱税をして逮捕されたことがきっかけで壊滅に追い込まれたユニティーでしたが、それがなかったら未だに運営を続けられていたのかと、そしてもしかしたら僕がここに入っていたかもしれなかったと思うと、ゾッとしますね。

現在、僕は都内にある個室シェルターで生活しています。当然ですが、ここでは受給した保護費を不当に奪われるなんてことはありません。逆に、来たばかりでお金が無かった頃は食料を恵んでもらったぐらいです(笑)

僕が貧困ビジネスに囲い込まれず、一発でここに来れたことについては「運がよかった」と言われた事も何度かありますし、実際そうだと思いますが、そもそも「搾取されない状態が当たり前ではないか?」とも思います。

そういう意味でも、弱者を貧困ビジネスによって搾取するような施設は、1つ残らず無くなってほしいと思います。

ただ、著書の最終章に書かれている部分には、少し共感する気持ちがあったのも事実でした。

安藤は私にこんなことを言った。

「貧困ビジネスに被害者なんていないと思うんですよ。もし劣悪な環境だったら逃げればいいんだし、寮にいる人は自分の意思で住んでいるんですよ」

他の元入所者を訪ねてみても、被害者感情を抱いている元入所者は限りなく少なくて、「向こう(ユニティー)は俺らのことを利用して、俺らだってユニティーを利用したわけでしょう。ウィンウィンだよね」などという言葉を口にする場合が多い。

「お互いに利益があった」という意味で、「ウィンウィン」と言ったり「お互いさま」などという言い方で、多くの元入所者が納得してユニティーの寮で生活していたのだ。

(中略)

救済された人からすれば、困っているところを寮へ連れて行ってくれて、飯と寝るところを与えてくれたことは確かな事実なのだ。

(中略)

ユニティーの中で私(著者)が仲良くなった知的障害を持つ20代の入所者から、「どうしても寮が出たい」という相談をされたので、ある日の夜、私はトンコ(脱走)の手助けをした。もちろん、和合(会長)にもユニティーの誰にも内緒で、私とその者の2人で極秘に進めた話だ。

それに先立って、彼が転居する場所を探さねばならなかった。

そこで、藤田氏(ユニティー訴訟の原告を支援していた藤田孝典氏)が代表を務めるほっとプラスの宿泊施設を頼ろうと連絡してみたのだが、藤田さんからは「今いっぱいなんですよね……」と言われてしまい、どうしようもなかった。

(中略)

たった1つ空きがあって入れることになったのは、池袋でホームレスの支援活動をする「てのはし」だった。同伴して、てのはしのシェルターへ行ってみたところ、大部屋に雑魚寝をする形式の施設で、既に2人の入所者がいて、その横で川の字で寝させてもらえることになった。

食事はあり合わせのものがあるが、金銭的な支給はない。連れてきた私が言うのはおかしいが、「これならユニティーの寮の方が良かったのではないか……」と、その部屋を見た第一印象で感じてしまった。

(中略)

(ユニティーでは)仮に100人のホームレスが大挙して助けを求めて来ても、どうにかしてその日のうちに受け入れることができただろう。もちろん慈善事業などやっていない。狙いは生活保護費の徴収だ。それでも、結果として、今、路上で行き場をなくした人がいれば、その人を受け入れることができる。

人助けは理屈ではないし、正論でもないのだ。いくら慈善事業であっても、たった一人を助けられないのでは、お話にならない。根底にある思惑はどうであれ、それが結果として路上にいる人達の救済になっていたのかもしれない。

(本書183〜185ページより引用)

……この部分に関しては、不謹慎かもなと思いながらも一理あるかもなと思ってしまいました。僕自身、たまたま今のシェルターに空きがあったから入れたものの、満室だったら恐らく断られていたと思いますし。

以前、ツイッター上でとある生活保護受給者の相談に乗ることがありました。

それは結局「制度上どうすることもできない問題」として収束したのですが、そこで僕は引用した文章と同じような「無力感」に苛まれ、だからこそ、その後に読んだこの文章に「これにも一理あるかもなぁ……」という思いを持ったのかもしれません。

もちろん、生活保護費の搾取は絶対に良くないことです。法律にも違反していますし、ユニティー出発のやったことは到底許されることではないでしょう。

しかし、「助けてもらえた」と感謝している元入所者の発言を見る度に、必要悪というかグレーゾーンというか、そういう部分で生かしておく必要も少しはあったのかもしれないのか……?と思うのも正直なところでした。

もちろん、僕が現在お世話になっている個室シェルターのように、真っ当な運営をしているところに入るのがよりベターな選択なのは間違いないと思いますが。

必要とする入所者も多くいたことですし、ユニティーも最初からもう少し真っ当な運営をしていれば、まだ存続できたかもしれないんですけどねぇ……もったいないことです。

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